コラム
食物中のナトリウムとカリウムの測定②

盛岡大学 栄養科学部栄養科学科
教授 板井 一好

 前回の説明では、測定する食品などを処理して溶液としました。今回はその溶液中に含まれるNaとKの濃度を測定する方法について説明します。NaとK共に水に溶けやすく性質がよく似ているので、測定には様々な工夫が必要となります。

 「食品衛生検査指針」では、原子吸光法または誘導結合プラズマ発光分析法を用いて測定する方法が標準とされていますが、私たちはイオンクロマトグラフ法を用いています。測定装置が安価であるなどの利点があるからです。標準の測定法よりも検出感度は落ちますが、NaやKは食品中に多量に存在しますから、感度は問題になりません。検出力は同等です。

 溶液中にはNaとKはそれぞれ陽イオンとして存在していますが、試料溶液をステンレス製の特殊なカラムに少量注入するとカラムの中を移動する間に徐々に分離が進み、NaがKよりも早めにカラムから出てきます。検出器に電気の伝わり具合(電気伝導度)を測定する装置を使用することで、カラムから分かれて出てくるNaとKを分けて測定する方法です。

 標準分析法と比較すると感度は落ちますが、食物にはNaやKは豊富に含まれるので充分測定範囲に入ります。装置が安価であることやNaとKが分離されて検出されるので測定上の誤差が出にくいことが特徴です。

 検出方法の違いはありますが、「食品衛生検査指針」の方法でも私たちの方法でも誤差をもたらす最も大きな原因は前処理と希釈です。NaもKも食品中に比較的多量に存在するので、条件によって多少の違いはありますが、最終的な希釈率は1000倍を超えます。可能な限り希釈による誤差を少なくするために、希釈操作には最小計量重量0.01グラムの電子天秤を用いており、また使用する蒸留水は不純物の極めて少ない「超純水」を使用するなど、良い精度と正確性を保つよう努力しております。

 

 

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