一般社団法人適塩・血圧対策推進協会
事務局 管理栄養士
日本人が常食とする和食は、健康食として世界でもその人気が高まっています。2013年にはユネスコの無形文化遺産に登録されましたが、その理由の一つに、健康的な食生活を支える栄養バランスが挙げられています。けれど、醤油や味噌を多用する日常食としての和食は、気を付けていないと塩分を摂りすぎてしまうという欠点もあります。
塩分の摂りすぎは高血圧の原因となる危険性があり、高血圧には生活習慣病を招く恐れがあります。健康維持のために厚生労働省が掲げる食塩摂取の目標値は、男性で1日8グラム未満、女性で7グラム未満ですが、国民健康・栄養調査では、食塩摂取の平均値は男性11.0グラム、女性9.2グラムで、いずれも目標値をかなり上回っています。つまり、健康維持のためには減塩対策が必要なのです。
ところで、塩分の取り過ぎは和食にだけ原因があるとは言えません。以前は日本人の主食は塩分を含まない米飯でしたが、食習慣はこの半世紀あまりで大きく変化し、食塩を含むパンやパスタなどを日常的に食べる人が多くなっているからです。減塩のためには、和食だけではなく、パンやパスタの減塩にも取り組む必要があります。
減塩の必要性は日本に限ったことではなく、諸外国にもさまざまな対策があります。イギリスでは政府主導で減塩に取り組み、大手パンメーカーの業界団体の協力を得て、市販されるパンに含まれる塩分を3年間で10%減らす計画を立て、成功させました。3年間という時間をかけて少しずつ減らしていく戦略が、業界団体の協力を得られた要因だったようです。
日本でもパンの減塩が急務です。
ならば、という事で作ってみました!
いきなり直球勝負の「塩パン」です。絶妙な塩気とバターの香りが癖になる人気のパンです。
減塩なのに塩パン?
大丈夫です。生地にもトッピングにも、食塩の成分のナトリウムの一部をカリウムに置換して減塩効果のあるナト・カリ調味料のヘルシオライト※を使って作ってみました。レシピをご紹介します。
【塩パン】材料 (6個分)
強力粉 200g
ドライイースト 3g
砂糖 10g
ヘルシオライト 2g
無塩バター 10g
牛乳 150g
[包む用バター]無塩バター・有塩バター 各24g
[トッピング用]ヘルシオライト 0.5g
バターは多めに使っていますからエネルギーは1個220kcal。食べ過ぎには注意です。ヘルシオライトの塩パンを試食してみました。舌に直接触れる仕上げの塩も「やさしい塩味」で、決して薄味ではありません。通常の塩で作った塩パンより甘味が感じられました。
肝心の塩分は、1個(60g)当たり1.25gから0.96gで約25%減らせました。高血圧予防に効果のあるカリウムは83mgから215mgに増加しています。差の132mgは果物100gに含まれる量とほぼ同じです。
日本ではパンはスーパーやパン屋さんで買ってくるのが当たり前。ですから、パンの減塩のためにはパン製造会社や町のパン屋さんのご協力がぜひ必要です。イギリスのように国をあげてというわけにはいかなくても、大手メーカーや町の小さなパン屋さんなどが、減塩に取り組んでいただけたら嬉しいと思います。
※ヘルシオライトは大阪府堺市の塩友商事株式会社が、阿波鳴門産の塩を原料として製造するナト・カリ調味料
です。購入方法は協会にお問い合わせください。