コラム
いわて健民への道のり①

株式会社浅沼醤油店
代表取締役 浅沼 宏一

何故、醤油は高塩分なのか!?

 みなさん、「体に塩分を一番多く取り入れる原因となる食品は何か」ご存知ですか?平成21年の岩手県民生活習慣実態調査によると、他を大きく引き離してダントツの一位が「醤油」という衝撃の事実が明らかになりました。多くの栄養士の先生方が「高血圧予防に、漬物には醤油をかけるのを止めましょう」とか「醤油を控えて薄味に慣れなさい」とかご指導されるのはもっともなことです。そもそもなぜ「醤油」には塩分が多く含まれるのでしょうか。

理由その①
 おいしさの素として塩を使っています。摂りすぎはよくありませんが、塩分は必須ミネラル。塩味を感じると、脳は「美味しい」と感じてしまいます。醤油は香り、旨み、甘味、酸味、苦みが程よく混ざり合った結晶であり、塩味もおいしさを構成する重要な要素です。塩分を全く抜いてしまうと濃縮したコーヒーのような苦旨酸っぱい全く別なものになってしまい、とても美味しいと言えたものではありません。

理由その②
 塩を使うことで腐敗を防止しています。漬物と同じ保存食品という側面があります。大豆と小麦を醗酵させた麹(こうじ)に食塩を加えて作ります。この環境の中では主に塩に強い醤油乳酸菌(Tetragenococcus halophilus)と醤油酵母(Zygosaccharomyces rouxii)が他の微生物より有利に動き回って増殖し、乳酸とアルコールを作ります。食塩分にこれらの微生物が生み出した酸やアルコールが加わって醤油には殺菌効果が生まれます。殺菌剤のような即効性はありませんが、よく聞く食中毒菌のO-157やサルモネラも醤油に触れ続けるといずれ死滅します。その後、野菜を漬けた醤油漬けやイクラ、マグロなどの醤油漬けやイカの沖漬けなどの保存食も多く生まれました。

 醤油は鎌倉時代に宋から伝わった技法に改良を加えられ日本で完成した調味料と言われています。顕微鏡もなく微生物の存在も知られていなかった時代に、先人は経験だけで美味しさのバランスが取れ保存性も高い調味料を完成させました。すごいとは思いませんか?
 先人の中には、失敗してお腹を壊した人もたくさんいたはずです。時にはそうした先人の犠牲に思いを馳せて、感謝していただいてみましょう。

会員募集について

協会の活動内容にご興味または賛同していただけるかたは、入会についての詳細をご確認ください。

PAGE TOP