コラム
リチウムの健康影響 ―ナト・カリに次ぐ3番目のアルカリ金属元素―

適塩・血圧対策推進協会
学術顧問 板井 一好


 リチウム(Li)は、ナト・カリ調味料のキーワードであるナトリウム(Na)やカリウム(K)と同じアルカリ金属の仲間である。最近になって、水道水などからのリチウム摂取量が多いと健康に良い効果をもたらす研究報告が、日本人を対象とした研究を含め多数なされた。その内容は、飲料水に含まれるリチウム濃度が自殺による死亡率と関係があるという報告である。つまり、非常に低い濃度レベルではあるが、水道水中のリチウム濃度が高い地域では低い地域に比べて自殺による死亡率が低かったという報告である。

 リチウムはもっぱらリチウム電池の原料として利用されているが、ナトリウムやカリウムの仲間で性質も似ている。その反面、リチウムはナトリウムやカリウムと同じ仲間なのに土壌や人体内の存在量が著しく異なっている。一般健常人の一日当たりのリチウム摂取量は約0.02~0.6mgで、この摂取量における血液中の濃度は約0.011mg/Lと、ナトリウムやカリウムに比較すると低い値であることが報告されている。人体内での存在量はナトリウム(9番目)とカリウム(8番目)に比べて極めて少なく、働きについてはよくわかっていない。

 一方でリチウムはうつ病などの気分障害の治療に効果があるとして、薬剤として世界的に用いられている。炭酸リチウム(Li2CO3)が治療薬として認可されていて、1日の投与量は症状によって炭酸リチウムとして200~1,200mg(リチウムとして約38~225mg)で、この投与量におけるリチウムの血液中濃度の治療域は、0.6~1.2mmol/L(4.2~8.3mg/L)とされる。この数字は、気分障害に有効な服薬量や血液中の治療レベルが、一般健常人の摂取量などと比べて1万倍くらいの量に相当する。

 このようにリチウムは、多量を服用すると気分が落ち着く効果があることから、気分障害の患者の治療薬として用いられている。そのなかで最近報告されているのは、治療領域の摂取リチウム量よりもはるかに少ない量でも健康に良い効果が認められる、という非常に興味深い報告である。
 リチウムは海水中に多く含まれ、ナト・カリ調味料で使用する原料の一つである粗製塩化カリウム(海水を濃縮して製造した塩化カリウムが主成分のもの)にも多く含まれる可能性があり、ナト・カリ食の新たなメリットになるかもしれない。その詳細は次回に述べる。

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