コラム
高血圧はなぜいけない? 高血圧を予防するには? 勤労世代の高血圧の知識

京都府立大学大学院 生命環境科学研究科
 教授 奥田 奈賀子


 高血圧は勤労世代を通じて徐々に発症し、高齢者では有病率が7割を超える病気です。高血圧や循環器病の心配を減らして老後を迎えたいものです。日本人全体として高血圧を予防するには、「いかに高血圧を予防するようなライフスタイルで、勤労世代を過ごすか」がポイントです。「高血圧がなぜ健康に良くないのか」について納得し、「予防するためのライフスタイル」について適切な知識を持つことが前提になりそうです。

 第57回日本循環器病予防学会学術集会では、某メーカー従業員を対象に、「高血圧が原因となる病気」「血圧を上げやすい/下げやすいライフスタイル」について質問したアンケート結果を報告したのでご紹介します。こちらの事業場では、定期健診の結果を従業員に報告する際に、健康教育を続けてこられました。

 高血圧が脳卒中や心筋梗塞と関連していることについては、ともに88%の方が「原因になる」と正解していました。慢性腎臓病(CKD)や認知症と関連することは最近言われてきていますが、「原因になる」と回答したのはそれぞれ33%、14%でした。

 「食塩摂取量が多いと血圧が上がる」「多量飲酒があると血圧が上がる」「運動不足だと血圧が上がる」「体重が増えると血圧が上がる」ことについては、すべての項目で約9割の方が正解していました。すばらしい成績です。「野菜・果物を多く食べると血圧は下がる」も、84%の方が正解しました。しかし聞き方を変えて「カリウム摂取量が多いと血圧は?」と尋ねたところ、「上がる(27%)」「下がる(37%)」「わからない(36%)」と回答は三分されました。

 カリウムは、野菜、果物、肉、魚など、多くの食品の「細胞の中」に含まれる高血圧予防ミネラルで、脂肪には溶けません。そのため、野菜、果物や、脂肪分少な目の肉、魚に多く含まれていて効率よく摂取できます。(コラム「カリウムの役割」参照)「カリウムは色々な食品に含まれる高血圧予防ミネラル」という知識が加わると、「高血圧予防のための食材選び」がレベルアップしそうです。

 ともあれ、今回のアンケート結果は大学生を教えている筆者からみて「ほぼ満点」でした。日本中の勤労世代でこの知識レベルを共有したいものですね。

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