コラム
意外と知られていないカリウムの健康効果

一般社団法人 適塩・血圧対策推進協会
 代表理事 岡山 明


 カリウムはナトリウム(食塩)と同じアルカリ金属の仲間で、ナトリウムとともに生命活動の維持に重要な役割を果たしている。有史以前の生活ではナトリウム(食塩)を豊富にとる食生活は海辺以外では極めて困難であり、当時の食塩摂取量は1gを下回っていたと考えられる。実際、アマゾンの奥地で暮らすヤノマモ族の塩分摂取量は痕跡程度しかわかっていない。逆にカリウムは、果実・木の実・肉などに豊富に含まれており、当時の人類は大量に摂取していたと考えられている。そのため、私たちの体は低ナトリウム・高カリウム摂取に適応して進化してきた。その結果、カリウムの排泄能力は高いが、ナトリウムはむしろ排泄しにくい仕組みになっている。ナトリウムを排泄しようとすると、カリウムが多いほうが排泄しやすいことも知られている。

 しかしながら、産業が整備された現代における食塩摂取量の急速な増加は、体内のナトリウム排泄能力不足を引き起こした。ナトリウムが体内に蓄積すると、体液量の増加などにより血圧が上がりやすくなる(ナトリウム依存性高血圧)。したがって、食塩摂取量の増加は高血圧を引き起こす原因の1つと考えられる。

 対して、カリウムは血圧を下げる作用があり、ナトリウムを排泄しやすくする効果がある。このコラムをお読みの方は皆さんがご存じだと思うが、一般的には意外と知られていない。野菜や果物を摂取すると血圧が上がりにくいことの主な原理は、野菜や果物に豊富に含まれるカリウムであるが、野菜摂取とカリウム摂取との関連は、残念ながらほとんど知られていない。

 その理由の1つが、腎不全患者や高血圧治療中の方の一部にみられる高カリウム血症の危険性が声高に主張されていることだと思う。高カリウム血症の人がカリウム摂取を増やせばさらに悪化することは明らかだ。一方、高血圧や慢性腎臓病の予防にはカリウム摂取が効果的であることが知られている。つまり、悪化した後はともかく、予防にはカリウム摂取が効果的なのである。社会の大部分の人は高カリウム血症ではなく、カリウムの摂取不足の状態にあることから、積極的なカリウム摂取増加が世界の公衆衛生の目標の1つとなっている。

 私たちは食塩摂取の低下ばかりでなく、カリウムを増やすこと・減塩+増カリウムによるナトカリ比低下の重要性について広く伝えていくことが必要であると考えられる。

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