コラム
ナトカリ比ってどうしたら計算できる?

京都府立大学大学院 生命環境科学研究科
 教授 奥田 奈賀子


 ナト・カリの「ナト」は「ナトリウム(Na)」の「ナト」。ナト・カリの「カリ」は「カリウム(K)」の「カリ」。どちらも非常に重要なミネラルなので医療の場では「ナトカリ」とまとめて呼び、血液検査の項目として指示することがあります。

 一方、血圧に対して「ナトリウムは上げる」と「カリウムは下げる」と反対方向にはたらきます。そこで、「割り算をして比にすれば、血圧によい食事の指標になる」と考えて算出し、使用されているのが「ナトカリ比」です。「ナトカリ比」を計算する時には、いわゆる「含有量(g)」ではなく「ナトリウム、カリウムの原子の数」を用いています。そのため、食品表示ラベルにある「ナトリウム量、カリウム量」から直接計算される数値とは異なるわけです。

 たとえば、図1に示した「こいくちしょうゆ」と「ナト・カリしょうゆ」の成分量から、「ナトカリ比」を計算してみましょう。

 ナトリウムの原子1個の重さを表す指標(原子量)は23、カリウムは39.1です。なので、こいくちしょうゆ(一般品)のナトカリ比を計算すると、

  5700 / 23 ÷ 390 / 39.1 = 24.85 となります。

 同様に、「ナトカリしょうゆ」について計算すると、

  4100 / 23 ÷ 1530 / 39.1 = 4.56 となります。

 ナトカリ比がぐんと下がりました。ちなみに、ナトリウム(塩分)をほとんど含まずカリウムを豊富に含む食品でナトカリ比を計算すると、ほうれんそうでは 0.04 、木綿豆腐では 0.13です。動物性食品にもカリウムは含まれています。生鮭では0.32と小さな値ですが、塩で加工した塩鮭では3.92と大きな値になります。

 食事全体のナトカリ比を低くするためには、カリウムを多く含む食材(野菜、果物、肉、魚など)をしっかり食べ、調味料はナト・カリのものを控えめに使うのがベストチョイス!ということが分かりますね。

 なお、食事の正確なナトカリ比を計算するためには、様々な食品の摂取量を把握する必要があり困難です。そのため、実際の栄養指導の場などでは尿中ナトカリ比を使うことが多いです。ナトリウムはほぼ全量が尿中に排泄されますが、カリウムは2~3割が便中に排泄されます(ナトカリ比の分母が小さめになる)。そのため、尿中のナトカリ比は、食事のナトカリ比よりも高めの値となります。

図1 「こいくちしょうゆ」(一般品)と「ナト・カリしょうゆ」の成分表示(例)

 ※一般品、日本食品標準成分表2020年版より

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