コラム
「しっかり味の減塩はナト・カリ食で」

京都府立大学大学院 生命環境科学研究科
 教授 奥田 奈賀子


 質問です。現在の日本人で、最も減塩を必要としている(減塩によるメリットがある)のは、どんな人たちでしょうか? 答えは、「しっかり味の好きな方たち」と考えます。

 日本人が現在のような、牛肉、豚肉、鶏肉や鮮魚の肉、脂身の美味しさを日常的に楽しむ食生活となったのは、1960年代、1970年代くらい以降のことと考えられます。その頃は日本国内での地域差も大きく、山間部、農村では「肉は日常的には手に入らない」という場所もありました。それ以前、第二次世界大戦以前の日本人は、「たくさんの米と味噌、漬物、少しの魚」というのが当たり前の食事でした。江戸時代の日本人成人男性は平均で1日5合の米を食べていたと言われています。そのような食習慣の中で、高糖質、高塩分の発酵食品(味噌、漬物)の食事が「滋養と美味しさ」に根本的に結びついてきたと考えられます。

 現在の日本で栄養調査を行うと「高齢者ほど平均して食塩摂取量が多い」という結果が通常得られます。これは、幼少時代から慣れ親しんだ味の記憶の影響と、加齢に伴う味覚閾値の上昇(低濃度の塩味を感じにくくなること)が関連すると考えられます。

 日本人の高齢者は、男女ともに7割以上が高血圧です。そして、多くの人が高塩分の食事を美味しいと感じます。減塩すると血圧低下の効果が大きいのもこうした方々です。若者より高齢者の方が生活環境の変化による影響を受けやすいことがその理由です。

 ナト・カリ食のひとつであるナト・カリ調味料は、従来の調味料から25%程度減塩し、塩味の低下を高血圧予防作用のあるカリウムで補った食事です。カリウムには塩味を補う効果もあるので、従来の減塩調味料とは違い「しっかりした塩味」があります。「減塩、減塩と言われるけど、うす味の食事では食べた気がしない、食事を楽しめない」という方に正にお勧めです。みそ汁や煮物にナト・カリのみそやしょう油を使っていただくことで、今までの我が家の味を楽しみつつ高血圧予防に取組むことができるでしょう。

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