一般社団法人 適塩・血圧対策推進協会
代表理事 岡山 明
ナト・カリ食を普及させる際の最大の課題は、カリウムが健康効果の高い元素であること、カリウム摂取は脳卒中ばかりでなく、慢性腎臓病を予防する効果のあることを的確に伝えることである。研究成果からは様々なエビデンスが示されているが、国民の知識とのギャップは大きくなるばかりである。
ナト・カリ食の第1の特徴は25%の減塩である。塩味を抑えるためとカリウムの健康効果を期待して、塩化カリウム20%相当のカリウムを補うこととしている。表1に示す通り、カリウム添加した調味料の中でもナト・カリ調味料のカリウムの割合は大幅に少ない。こうした割合を設定した理由は、味と全面的に普及した場合のカリウム摂取量が現在より1,000mg程度増加することを目指しているためである。他の調味料は単独で使用する範囲ではよいが、調味料の多くがナト・カリ化した場合には、カリウム摂取が推奨量より多めになってしまう可能性がある。
ナト・カリ塩はナトリウムの含有割合が高いので、カリウムの取り過ぎの前にナトリウム、つまり食塩の摂取が多くなってしまう。したがって摂取制限を行う必要性は低いと予測されるが、腎機能が低下した人でも安心して摂取できる食品であることを伝えるためには、何らかの研究成果がほしいところである。
このように、知識をどのように広げるかはこれからの重要な課題である。ナト・カリ食だけではなく様々な研究成果が近年蓄積されており、こうした研究成果を分かりやすく国民に伝える仕組みがますます重要となってきている。欧米ではこうした知識伝授の方法に関する研究が最近注目されている状況だ。わが国日本では、研究者や行政が専門家に伝え、それを一般国民に伝える仕組みが定番であったが、知識伝播速度が研究のそれに追いつかない現状を考えると、新たな取り組みを模索する時期にきたと考えられる。
国民にとって大きな福音である知識情報がうまく伝播しない状況を改善するためには、従来の方法にこだわらず、知識を伝える仕組みを構築していくことが求められる。知識伝播に関する研究は、ひょっとしたら10年後には大きな研究分野に成長している可能性もあるのではないだろうか。
さらに、知識伝播を早める際にはインフルエンサーなどの専門職以外のキーパーソンも重要な役割を果たす可能性がある。一方で、インフルエンサーが収入を増やす目的で情報を提供する場合もあるため、何がベストな方法なのか試行錯誤しながら取り組むことが必要だろう。
表1.カリウム添加減塩食品の含有量比較
商品名 | 規格 | Na(mg) | K(mg) |
ナト・カリソルト | 1g | 265 | 59 |
減塩A | 1g | 162 | 270 |
ナト・カリしょうゆ | 15ml | 630 | 120 |
減塩醤油B | 15ml | 490 | 800 |
ナト・カリだしつゆ | 10ml | 470 | 100 |
減塩だしつゆC | 10ml | 420 | 200 |
ナト・カリ食(ナト・カリ調味料)は一般的なカリウム置換の減塩食品と比較すると
カリウムの含有量が半分以下であることがわかる