コラム
「カリウムの健康効果をどう広めるか」

一般社団法人 適塩・血圧対策推進協会
 代表理事 岡山 明


 カリウムの重要性については生命科学などでは広く知られているが、ナトリウム(食塩)と比較すると、健康との関連で議論されることはほとんどなかった。ある研究で実施した一般企業従業員に対するカリウムの健康効果に関するアンケートにおいて、カリウムが生活習慣病予防にとって重要な物質であることを認識している人はほとんどいないことが明らかになっている。

 一方、減塩の重要性は国を挙げての課題であるが、長年の取り組みにも関わらず充分な成果を上げるに至っていない。海外では、減塩と増カリウムを組み合わせたCombination effect(組み合わせ効果)に着目した戦略の重要性が注目されるようになってきた。科学的なエビデンスが集積され、単独で減塩を実施するより、カリウム摂取増を組み合わせた減塩の方が、疾病予防効果が高まることが徐々に広まりつつある。減塩かつ増カリウムによる健康効果は明らかで、単純な減塩では実現できない大きな疾病予防効果が得られている。

 日本では食事摂取基準や高血圧ガイドラインなどでカリウム摂取を増やすことの重要性に触れるようになったが、具体的な普及のための議論はほとんど行われてこなかった。栄養に関する専門家もカリウム摂取を増やすことの重要性について、強調することはほとんどない。この状況をみると、我が国ではカリウムの健康効果の有無に関する議論ではなく、エビデンスが示すカリウムの健康効果をどのように広めていくかが課題といえるだろう。カリウムが重要な栄養素であること、カリウム摂取により生活習慣病が予防される事実をどのように広めていくのが良いのだろうか。

 例えばカリウムを添加した多くの減塩調味料では、カリウムが非常に多く含まれていてもこれについてはほとんど触れることなく、減塩調味料であることを強調している。カリウムは栄養素ではなく添加物として考えていることに問題があるのではないか。当協会としては、カリウムの摂取が減塩効果を高め、同じ減塩でも疾病予防効果が高まることについて繰り返し説明し、ナト・カリ食といったカリウムを前面に出した食品の普及が重要となるだろう。ナト・カリ食の場合は、カリウムは純粋なものではなく混合物であることから、カリウムの毒性はより出にくいことも、繰り返し発言すべきであろう。

 しかしながら、カリウムそのものの健康効果に関する知識をどのように普及するかは大きな課題である。欧米では知識の普及に関する研究が重要な研究課題となっている。我が国でもエビデンスの効果的な普及に関する研究を推進すべき時代になったのではないだろうか。

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