コラム
Na/K比の低い食事で、脳卒中や心臓病を予防する
―NIPPON DATA80 の 24 年追跡結果より―

一般社団法人適塩・血圧対策推進協会
代表理事 岡山明

 食品から摂取するナトリウムとカリウムの比率をナトリウム/カリウム比(Na/K比)と言います。カリウムに比して、ナトリウムの摂取量が高いほどNa/K比は高く、反対にナトリウム量が少なくなるほど低くなります。

 循環器疾患基礎調査の受診者を24年間追跡調査した研究で、Na/K比が高い人ほど循環器病死亡リスクが高いことが明らかとなりました。研究結果の詳細は、英国医学雑誌「BMJ Open」の2016年7月号に掲載されています。塩分が多いほど血圧が高くなり、カリウムが多いほど血圧が低くなることは知られていますが、ナトリウムとカリウムの組み合わせ効果は、これまで日本人では明らかではありませんでした。研究結果は、今後の減塩健康食品開発に生かされそうです。

 Na/K比と循環器病死亡リスクの関係を解明したのは、NIPPON DATA 80 研究です。1980年に当時の厚生省が全国300か所で実施した循環器疾患基礎調査に参加した全国の30歳から79歳の男女8283人の受診者を24年間追跡調査したデータを解析し、基礎調査当時の食事調査から、受診者それぞれの塩分の摂取量とカリウムの摂取量を計算して、その後の脳卒中や循環器疾患(脳卒中と 心臓病)などの起こりやすさや総死亡との関連を検討しました。

 検討の結果、調査当時の受診者の食事のNa/K比とその後の循環器疾患による死亡リスクに相関関係があることが分かりました。食事の Na/K比が高い群は、Na/K比が低い群と比べて、循環器病死亡リスクが39%増加しました。また、Na/K比が高い食事は、特に脳卒中の死亡リスクを上げ、全死亡リスクを上昇させていることも分かりました。一方、食塩摂取量と循環器病、カリウム摂取量と循環器病の関連も検討しましたが、どちらも摂取量の多寡と循環器疾患死亡率との間には明瞭な相関関係は見られませんでした。

 研究結果が示唆するのは、脳卒中や心臓病を予防するためには、食塩摂取量をできるだけ減らすと共に、カリウムの摂取を増やすことが重要であることです。現在、市販されている減塩食品の多くは、ナトリウム含有量を減らすことを重視して開発されていますが、ナトリウム含有量を減らすだけではなく、同時にカリウム含有量を増やし、Na/K比を低くすることで、より大きな予防効果のある健康食品を開発することができそうです。

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