コラム
 減塩の今昔

適塩・血圧対策推進協会 理事
南海塩業株式会社 相談役
阪之上 清以弥

 塩は人が生きる為に絶対に必要なものです。そして塩味が食べ物のおいしさを増強する-少し塩味の効いたスープやパンがおいしいこと、肉・卵料理に塩味がなければ物足りないことは、誰もが知っているでしょう。しかし、人間にとって、大切な塩でも摂り過ぎてしまうと健康上の障害を起こすことは喧伝されて久しくなりました。

 私は、塩が国の専売であった時代に塩元売の会社を営んでおりましたが、世の中の健康への関心の高まりの中で、塩の過剰摂取の害が少しずつ言われるようになり、まだ日本には減塩の商品がない時代に、フィンランドのサルコ社が理想的な塩分・ミネラル比率の塩を開発したと報じられました。

 この話を聞いて、総合商社の開発課長とともにフィンランドのその会社を訪れました。30数年前は専売の塩を売らせてもらっている立場にもかかわらず、何故減塩のことを考えるのだと叱責されましたが、初めて白夜を経験し、現地の人々と出会ったことが懐かしく想い出されます。

 その後、減塩の商品がぼつぼつと売られるようになり、アメリカ・モートン社の塩分50%、カリウム50%の塩を中心に少しずつもてはやされるようになりましたが、国産の同等品が出てきても売れない状況が続きました。年を追うごとに、医学会から減塩を唱える声が大きくなりましたが、日本人の塩分摂取量は相変わらずの状態です。その理由は、微妙な味覚を大切にする日本人・日本食にとって、塩と少し異なった苦みや辛味が加えられたものは、口に合わないということなのでしょうか。

 各メーカより様々な減塩食品が売り出されるようになりましたが、価格や味に課題もあり、調理用や業務用にはなかなかむずかしいようです。

 このような中で、当協会のカリウム添加を20%に抑えた発想は素晴らしいものであると痛感しました。あえて味を損なわないぎりぎりの比率をみつけ、開発されたのであります。
ぜひこの考え方を広め展開することこそ、我が国で実質的な減塩が実現できるものと思います。

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